#2 支配型と服従型
支配は自分の望みをかなえ、服従は相手の望みをかなえる

次は支配型と服従型についてです。
これは人間の興味の方向性を大きく二つに分けたものです。これもSとM同様、辞書に載っている通りの言葉の意味とは少し違います。
とても簡単に言ってしまえば、支配とは自分の望みをかなえたい、という気持ち、服従とは相手の望みをかなえたい、という気持ちを指します。
SMマトリックス上では、縦軸の上側が支配、下側が服従として表されます。
支配……他者の望みよりも自分の望みに興味をもちそれをかなえることを優先させる。
服従……自分の望みよりも他者の望みに興味を持ちそれをかなえることを優先させる。
会話例

魔術師 「不老不死の妙薬を作るために毒キノコが必要なんですが、
森からキノコを取ってきていただけませんか? 満月の夜に
毒キノコとカエル、そして、魔女の血を煮込んで……」

農婦 「は、はあ……(また妙なものを作ろうとしてるのね……)」
魔術師は農婦に対して、自分が興味を持っている不老不死の薬の話を一方的に話し、毒キノコをもってくるように頼んでいます。
「自分がこの情報について話したい、毒キノコが欲しい」という自分自身の望みをかなえるために魔術師は発言しています。
したがって魔術師のこの発言は支配的なコミュニケーションパターンです。
一方、農婦の方は魔術師、つまり相手の望みに沿って、よくわからないながらも話を聞き、毒キノコを取ってくることを受け入れました。
このように相手の望みに合わせるのは服従的なコミュニケーションパターンです。

姫 「(ため息をついて)はあ……」

乳母 「姫、ご機嫌ななめのようですね? どういたしました?」

姫 「ええ。ちょっと聞いてよ。隣国の王子から誕生日のお祝いの連絡がまだ来ないの。」
こちらは先ほどの例よりも少し複雑です。
姫は最初にため息をついて、不機嫌そうな様子をおそらく無意識的に乳母に伝えています。ここに「私の話を聞いてほしい」という自分の望みが間接的な形で表されています。
そして、結果としては、乳母の方から姫に対して声をかける形で自分の望みはかなえられました。
つまり、姫の最初の態度、「(溜息をついて)はあ……」は自分の望む結果を引き出す効果があったということです。これは支配的なコミュニケーションパターンだと言えるでしょう。
一方、乳母は、姫の最初の態度から姫、つまり相手の望みを察しています。そして、姫の望みをかなえるために、自ら姫に様子伺いの声をかけています。
自ら声をかけて質問してはいますが、あくまでも姫の望みをくみ取り、それをかなえるために質問しているわけですから、これは服従的なコミュニケーションパターンです。

SMマトリックスにおいては、支配的なコミュニケーションパターンは以下の4つです。
ソフト支配型M(踊り子)
ハード支配型M(姫)
ハード支配型S(将軍)
ソフト支配型S(魔術師)
一方、服従的なコミュニケーションパターンは以下の4つとなっています。
ソフト服従型S(海賊)
ハード服従型S(乳母)
ハード服従型M(騎士)
ソフト服従型M(農婦)
となっています。
よくある具体例
とても暑い夏の日、
複数の人が集まっている場面に誰かがアイスクリームを買ってきた。
アイスクリームは人数分買ってきたつもりだったが一つ足りなかった。
そして、アイスクリームの種類は全て違う。
さあどうなるのか?
まずは服従型のうちの1人が、
「さっき、ご飯食べたばかりでおなかいっぱいだから私はいらないよ。」
と答える。
服従型にとって、真っ先に興味が行くのは
周りの人たちは何を望んでいるか?ということだから。
本当は自分もアイスクリームを食べたいと思っていたとしても
半ばからだの癖としてまずは他の人に行き渡るように行動してしまう。
そして、アイスクリームを食べない人が決定した瞬間、
迷わず自分の食べたいアイスに手を伸ばすのが支配型。
支配型はアイスがやってきたことを知った瞬間から、
「自分はどのアイスを食べたいかな?」ということが
自然と頭に浮かんでくる。
支配型が我先にと自分の食べたいアイスを持っていくのが
一通り終わったかな、と感じてから
残り物に手を出すのが残りの服従型。
そのときにも、
「この人は確かチョコレート系は苦手だったはずだから、
バニラを残して自分はチョコを取っておこう。」
などというように他者の望みを考えてしまうのが
服従型のサガなのであった……
支配型の人の特徴

- まずは自分の望みをかなえようとする
- 自分の望みがかなうと喜ぶ
- 自分の望みがハッキリしているので、自分の望みを素早くかなえやすい
- 他者の望みよりも自分の望みを優先させて行動するので自分の望みと他者の望みが不一致な状況のときに人間関係のトラブルが起きることがある
- 本質的には他者にはあまり興味がない
- 自分の望みをかなえるために他者に興味を持つ必要があるときに限り、他者にも強い興味を持つ
服従型の人の特徴

- まずは他者の望みをかなえようとする
- 他者の望みがかなうために役立てると喜ぶ
- 他者の望みに興味を持つので対人援助がうまい
- 自分の望みよりも他者の望みを優先させて行動するので、自分の望みと他者の望みが不一致な状況のときでも円滑な人間関係を保つことができる
- 自分の望みがハッキリしないことも多く、自分の望みをかなえることは苦手
- 自分の望みと他者の望みが不一致な状況のときに自分の望みを主張することが苦手
支配型と服従型のシフト
支配型の人はいつでも支配型、
服従型の人はいつでも服従型、
というわけではありません。
支配型の人でも相手の望みを優先させなければならない場面があります。
また、そもそも自分には取り立てて望みがないような場面もあります。
そのような場面では支配型の人も服従型のポジションにシフトします。
同じことは服従型の人にも言えます。
服従型の人が必ず他者の望みを優先されるわけではありません。
どうしても自分の望みを通さないとまずいような場面もあります。
日頃、自分の望みにそれほど固執しない服従型ですが、
自分にとって大変にこだわりのある事柄になると
他者の望みよりも自分の望みがクローズアップされるようになります。
そのようなときには服従型の人も支配型のポジションにシフトします。

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